タオルの毛羽落ちとは?ー前編
2025/11/13
タオルを洗濯したあと、黒いTシャツに白い綿ぼこりがついて気になる。
「タオルってなんでこんなに毛羽が出るの?」と疑問を抱いたことはありませんか。
実はこの白い綿ぼこりは“単なる汚れ”ではなく、タオルそのものを構成している綿繊維の一部が失われたものです。毛羽落ちは、タオルの寿命や風合いに深く関わる、意外と奥の深い現象なのです。
本記事(前編)では、
・毛羽落ちとは何か
・なぜタオルは毛羽立ち・毛羽落ちしやすいのか
を、専門的な視点を交えながらも、できるだけわかりやすく解説します。
タオルの正しい理解は、よりよいタオル選びや日々のケアにもつながります。まずは“毛羽落ちの正体”を一緒に見ていきましょう。
「毛羽落ち」とは何か? — 繊維工学的な定義
タオルは、一本一本の綿繊維を束ねて「糸」にし、その糸を織り上げて作られています。
このとき、糸の中に完全に収まりきらず、表面から飛び出している繊維の端があります。これが「毛羽」です。
毛羽落ち=糸から“はみ出した繊維”が抜け落ちる現象
繊維工学的に見ると、毛羽落ちは次のように定義できます。
> 毛羽落ち:
糸の表面に飛び出した繊維の端(毛羽)が、摩擦や洗浄、化学的影響によって糸から抜け落ち、タオル本体から分離する現象。

ここで重要なのは、毛羽落ちは「表面のホコリが付着した」のではなく、タオルそのものの一部(繊維)が失われているという点です。
この「繊維の損失」が続くと、タオルは次第に痩せていき、
ふわふわ感がなくなる・吸水性が落ちるといった機能面の劣化に直結します。
タオルが特に毛羽落ちしやすい理由 — パイル構造の宿命
タオルの表面をよく見ると、小さな輪っかがびっしり並んでいます。これがパイルと呼ばれる構造です。
パイル構造には、大きく2つの役割があります。
・水分を素早く吸い取るための表面積を増やす
・肌あたりを柔らかくするためにクッション性を持たせる
一方で、パイルは布地から立ち上がっているため、次のようなストレスを最も強く受けます。
・体を拭くときの摩擦
・洗濯槽の中での揉み・こすれ
・乾燥時の回転や衣類同士のぶつかり
その結果、
パイルの根元に「引きちぎる力(せん断応力)」がかかり、パイルを構成する糸の中で、繊維が滑って抜け落ちるといったことが起こりやすくなり、毛羽落ちは構造的に避けられない現象となるのです。
まとめ
毛羽落ちは、タオルの構造や働きに深く関わる自然な現象です。
その仕組みを理解することで、「なぜ毛羽が出るのか?」という疑問が解消され、タオルを見る視点が少し変わってきたのではないでしょうか。
次回の後編では、毛羽落ちが“多いタオル”と“少ないタオル”の違いを生み出す繊維特性や設計思想について、さらに掘り下げていきます。
タオル選びの基準が一段と明確になる内容ですので、ぜひ続けてご覧ください。