タオルの毛羽落ちとは?ー後編

タオルの毛羽落ちとは?ー後編

2025/11/20

前編では、毛羽落ちの正体と、タオルのパイルという構造が毛羽落ちを引き起こしやすい理由について解説しました。

後編となる今回は、さらに一歩踏み込み、タオルごとの毛羽落ちの“差”を生み出す要因に迫ります。

毛羽落ちは、「不良品だから」「安物だから」と片づけられがちですが、実際には

・繊維の長さ
・撚り(より)の強さ
・糸の太さ
・設計思想と加工技術
といった複数の要素が絡み合った“構造的な必然”です。

この記事では、毛羽落ちリスクを左右する繊維特性の違いをわかりやすく整理し、さらに「毛羽落ちはタオルの不良ではない」ことを明確に解説します。

読み終えるころには、タオルを見る目がガラリと変わり、

「このタオルはなぜ毛羽が出るのか?」、「どう選べば毛羽落ちしにくいのか?」が、自然と理解できるようになるはずです。

繊維特性と毛羽落ちリスクの関係

「摩擦を受けると、そのまま抜け落ちやすい」という特徴があります。

逆に、繊維が長く揃っている高品質なコットンは、糸の中で繊維同士がしっかりと絡み合い、毛羽落ちが起こりにくい傾向があります。

 撚りが甘い糸は“ふわふわだが抜けやすい”

糸は、繊維の束に「撚り(ツイスト)」をかけて作られます。

この撚りが強いほど、繊維同士はしっかり結束しますが、手触りはややシャープになりがちです。

一方で、無撚糸(ほとんど撚りをかけていない)・甘撚り糸(一般的な糸より撚りが弱い)は、繊維が自由に広がるため、とても柔らかく、ふわっとした風合いになります。

しかしその分、繊維の結束力は弱くなり、毛羽落ちのリスクは高くなります。

> 柔らかさを追求するほど、毛羽落ちリスクは上がる
——これが「柔らかさのパラドックス」です。

糸が太い=必ずしも強い、ではない

タオルには一般的に「太めの綿糸(例:20番手など)」が使われます。

太い糸はボリューム感を出しやすい一方で、糸内部の密度が低いと、繊維同士の結束が弱くなります。

洗濯・乾燥で大きな力がかかったとき、内部の繊維が動きやすく抜けやすいといった面もあります。

「太い=丈夫そう」というイメージがありますが、繊維の質・撚りの設計・仕上げ加工まで含めて考えないと、本当の耐久性は判断できません。

毛羽落ちは「不良」ではなく“構造的な必然”

ここまで見てきたように、毛羽落ちはパイル構造であること・柔らかさ・吸水性を高めるための設計・繊維長や撚りの条件といった要素から生まれる構造的な現象です。

もちろん、粗悪な原料や過度に甘い撚り、不適切な仕上げ加工によって「異常に毛羽落ちしやすいタオル」が存在するのも事実です。

しかし、ある程度の毛羽落ちは、タオルというプロダクトの性質上避けられないものであり、「毛羽が一切出ないタオル」は、柔らかさや吸水性を犠牲にしない限り、現実的ではありません。

大切なのは、毛羽落ちの“量”をどうコントロールするか、タオルの心地よさと寿命のバランスをどう取るかを理解したうえで、上手に付き合っていくことです。

まとめ:仕組みを知ると、タオル選びとケアが変わる

毛羽落ちは、決して「悪いタオルの証」ではなく、素材の特性や設計思想によって決まる、タオルの本質的なふるまいです。

繊維の長さ、撚り、糸の太さ――それぞれの条件がタオルの風合いや耐久性に影響を与え、毛羽落ちの量にも違いを生み出します。

仕組みを知れば、タオルはもっと選びやすくなり、もっと長く、気持ちよく使えるようになります。

タオルとの付き合い方が変わる“体感できる知識”を、これからもお届けしていきます